一農学部生の戯れ言。(1)(12/15PM)
2001年12月14日農水省や厚労省の調査が確定してから、と思っていたのですが...いつまで経っても進展しそうにないので見切り発車。一応、農学部に所属する一学生として(ただし反主流の研究室かも、ね)荒削りながら断片を出してみることにします。狂牛病問題。
なお、以下はあくまでも私の不十分な知識により、問題のひとつの側面の提示を試みているに過ぎません。ご了承下さい。なにしろ狂牛病騒動が内包する問題は多岐に渡っているため、全てを網羅的に分析し書くことは私には出来ないし、紙面も足りません。だいたい誰もそんなもの読みたくないでしょう(笑)。既に新聞などのメディアで整理されていることを今さら書いても仕方がないのですが。
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道県や農水省などの調べにより、現在までに見つかった狂牛病の感染牛は三頭とも誕生時に同じメーカーの代用乳で育てられていたと判明。さらにこのうち、千葉で見つかった一頭目と北海道の二頭目には同じ配合飼料が与えられていたという報道。
この代用乳は全国農業協同組合連合会(全農)により一括して販売されており、原材料の一つとして動物性油脂や動物の血しょう蛋白が含まれている。この油脂の原料には牛脂が使われているため「製造過程の中でプリオン蛋白が混入する危険性はないとはいえない」。
そして、配合飼料の製造工場では牛の飼料と豚・鶏の飼料(肉骨粉を使用)の製造工程が重なるラインで十分な洗浄がなされておらず、豚と鶏の飼料に入れる肉骨粉が「牛の飼料に混入しなかったとは言い切れない」とのこと。
狂牛病発生の原因として目されている事実のうち、報道メディアにより公開されているのは今のところこのくらいでしょうか。未だに調査が確定していないため、以下は仮定の話にならざるを得ないのですが...
本来は草食の家畜に、乳量を増やすため、生育効率を高めるため、などという理由で動物性・植物性蛋白質を食べさせる。もちろんこれは生物学的には非常に不自然な行為に違いありません。
そして、そもそも何のために肉骨粉を製造する必要があったのか。リサイクルという名の経済性、つまりは人間の都合を重視した結果ではなかったのか。詳しい因果関係の説明は今回は省きますが、このあたりの要因が重なることで狂牛病という病気が発生し、被害が拡大再生産的に広がったというのが最近の論調となっています。
しかし私は、今回の狂牛病の「感染被害の拡大」に注目した場合、その一因として、経済性や効率性を追求した結果、酪農業や畜産業が高度にシステム化・画一化されたことも挙げられると思います。そう、例えば、これまで農協が全国各地で酪農技術から経営、販売に至るまで一括して強い指導を行ってきたような、その組織的な経営システム自体に問題があるのではないかと。
三匹の乳牛は異なる地の異なる牧場で生まれながら、同じメーカーの代用乳を飲まされていた。この事実からして既に不自然でしょう。本来なら、牧場が違えば当然食べている牧草も違う。母牛が出す乳の質も変わってくるはずです。しかし経済性を重視して母牛の乳を販売に回すために子牛を離し、代わりに全国で規格統一された代用乳を与えるよう指導した。このため、一種類の代用乳を原因とした病気が各地でほぼ同時に発生したとも考えられます。
これは広く単一作物・単一銘柄が栽培されるようになり、同じ農薬を使った結果、同じ害虫や病気が大発生して被害が拡大する傾向がある現在の農業と同じ理屈。ここでは地域差や個体差といったものはほとんど考慮されていないのです。
現在は多様性の時代、とよく言われます。では、多様性を重視して一軒の、もしくは一グループの農家が独自の酪農経営を試みたとしても、現状では農協が流通ルートに関して強い権限を持っているため、個人で出荷や販売を行うことは非常に困難なのは否めない。成功し、安定した経営を行えるケースはごく一部でしかありません。
これまでに積み上げられてきた、農協を中心とした効率的な酪農システムが日本の酪農業を安定した状態に支えていたのもまた事実。これを否定する気は全くありません。ただ、今回はそのシステムが有する脆弱性の側面ゆえに狂牛病の感染拡大が起こった、そんな気がします。
現在は農家や農協側からもそのような経済性一辺倒なシステムの弱点が指摘され、改革議論が起こっているとのこと。いまだ未熟で勉強途上の一学生としては、まずはこれからの動きを注意深く見守っていくことにしましょうか。
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>フリスクさん(http://www.note.ne.jp/diary/15617/)
まさかあれが紹介されてしまうとは。(^^; 最近、更新していないのにやたらカウンターの回りが早かったのはそのせいでしたか(笑)。
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