何だか時期を外してしまいましたが(笑)、11日に和歌山地裁で言い渡された毒物カレー事件判決についてまめ知識などを少し。まだ一週間程度しか経っていないので覚えている方も多いでしょうが、まずは以下の記事をどうぞ。

http://www.mainichi.co.jp/news/selection/archive/200212/11/20021211k0000e040020005c.html
http://www.mainichi.co.jp/news/selection/archive/200212/11/20021211k0000e040078000c.html

最初の記事を読めばお分かりの通り、今回の判決は主文(例:○○○○を懲役×年に処する)を後回しにして判決理由の朗読から始めました。傍聴している当事者にも分かりやすいように、との配慮からテレビモニターを使って丁寧に説明したこともあり、所要時間は休憩をはさんで7時間半。もったいぶらずにさっさと結論を言っちゃえよーと短気な私は思ったりするのですが、この順序にはそれなりの理由があります。

まず、刑事訴訟規則では、判決に際し主文とその判決理由を朗読することが定められています。通常は主文から朗読されますが、死刑の場合に限っては原則として先に判決理由から述べるという慣例があるのですね。いきなり死刑を宣告すると被告人に与えるショックが大きすぎるから、というのがその理由。

まぁでもこの慣習は関係者の間ではよく知られている話ですから、裁判長が「主文を言い渡しますが、よく聞いてもらいたいので理由から先に述べます」と言った瞬間、マスコミは「厳罰が予想される」と速報を流し、被告人側弁護士はあぅーと天を仰ぐ訳です。意味がないと言えば意味のない慣習ではあります。

しかし、ここで気をつけなければならないのは【主文を後回し=死刑】の図式が常に成り立つとは限らないということ。ごくまれにですが「本来は死刑に相当するが、様々な理由から今回は極刑を避ける」という場合もあるのです。最近の事例でおそらくもっとも有名かつドラマティックだったのは下記リンクの判決でしょう。ここで先走って「死刑の見込み」なんて速報を出していたら大騒ぎになったに違いありません(出さなくても十分に大ニュースでしたがね)。

http://www.mainichi.co.jp/news/selection/archive/200006/06/0606e051-400.html
http://www.mainichi.co.jp/news/selection/archive/200006/06/0606e058-400.html

これなどはまさに文字通り「理由をよく聞いてもらいたい」という裁判長の意図が含まれているのでしょう。他にも調べてみると「懲役2年6ヶ月(執行猶予5年)、罰金100万円」な判決の時に主文を後回しに述べた裁判官もいたそうです。どう考えても死刑にはなりそうにない事件(覚せい剤の密売)なので、この場合は一種のショック療法と考えた方がいいのかも、とのことです(→参考サイト「ニッポンリポート」参照)

  *  *  *

んで、肝心の毒物カレー判決についてはどう考えるかって?

それこそ法律専門家ではない私には分かりかねる内容ですが、感情論を別にしても妥当な判断ではないでしょうか。遺族の方や被害者は「被告人の黙秘のせいで事件の真相も動機も分からない」とやりきれない気持ちでしょうが、そもそも黙秘権はれっきとした権利ですからこの点については非難できないのです。被告人側も「心証を損ねる」というリスクを分かった上で選択したのでしょうから。

《参考サイト》
「まめ知識の部屋」
 →http://www.asahi-net.or.jp/~nx7r-tsm/mame6.htm
「ニッポンリポート」
 →http://members.aol.com/Tetsu220/008.html


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